母を横目で見ると、前のテレビを見ているのがわかる。

そして、私はある言葉が流れた。

『少しずつで…いいからね?記憶を思い出すのは…』

この言葉はどういう意味だったのか、今になってわかった。

母は私に悲しい思いをしてほしくなくてこういうこと言ったんだ。

でも、もう全部思い出した。

悲しくなんて無かったよ。

私はこの事を知らせようと、母の肩に触れた。

私の行動に驚いたのか、こっちを見ている。

『言わなきゃ』

「お母、さん…」

顔を合わせずに、私はテレビの方向を見ながら言った。

口が思うように動かない。

だから、ゆっくりとしか喋れない。

「なぁに、友紀ちゃん」

「っ!」

久々に母と会話をした。

昔と変わらない、優しい口調だった。

「あの、ね。信じてくれるかわからないけど…言うよ?」

母は“友紀ちゃんの言うことは信じるわ“と言った。