いままで…ありがとう

「そんな……うぅわぁ!!」

また、うつむいて泣き出してしまった。

この人はさっきから思っていたけれど誰だろう?

何で…泣いているんだろう?

私はその人の背中を撫でた。

すると、驚いたのか顔を上げて私を見た。

真っ赤に腫れた目。 

頬には涙が流れた跡。

滴が流れる瞳。

「あの…今は誰だかわかりませんが、少しずつでも思い出してみます」

「っ!友紀っ」

「だから、もう泣かないでください」

その瞬間、私はいきなり抱き締められた。

肩に顔を置いて泣いているのがわかる。

私は包み込むようにその人の背中を、また泣き止むまで撫でた。

そして、私はこのあと三週間ほど眠っていたことを医者から知らされた。