いままで…ありがとう

「…これは、記憶障害ですね」

「記憶…障害?」

3分ほど前、ここの部屋に医者が入ってきた。

そして、隣にいた人はうつむいて泣いている。

どうして、泣いているの? 

そして、記憶障害ってどういうこと? 

私は何かを忘れているの?

頭を抱え込んでも、思い出せない。

すると、医者が何かを私の前に見せた。

「これは、何かわかるかな?」

「……ペン」

私が答えるとペンを胸ポケットに戻した。

「これは、一部の記憶が無くなっていますね」

医者は隣にいた人に向かっていった。

一部の記憶?

「スン……一部の…ゥッ…記憶が無くなっているとは…」

顔を上げて言った。

「一部の記憶が無くなっているというのは、この人は誰か・過去に何があったのか、この事だけを覚えていないことです」

分かりやすく、説明している。

「けれど、物などは覚えている。そんな障害です」