★桜田高校。

 「おぉ…。」
 桜田高校の正門の前に立っていた。
 新しい制服に身を包み、心臓はドキドキしていた。

 


 大して頭も良くないのに、この高校に入ったのには理由があった。
 …親友との、約束を守る為。
 絶対、守らなくちゃいけない。






 「なつー!」
 後ろから、聞き覚えのある声をかけられ、振り返る。
 「じゅり、こうくん…。」

 倉岡樹里と佐渡浩輔。
 彼らは、中学の時の…っと言っても、浩輔とは幼なじみである。
 樹里とは、中学に入って知り合い、そして…、
 

 「よっ、元気か?」
 「うん。」



 千夏の彼氏である。       


                                   「おぉー!ここが桜田高校か…。」 
 「桜が綺麗だなぁ。」
 樹里は頭が良く、余裕でこの高校にはいれた。

 「…良くはいれたよなぁ…、お前。」
 浩輔が千夏の方を見てつぶやいた。
 「良く言うよ…、こうくんだってギリギリだったくせして。それを“俺余裕だったぜ”ってよく言えるよね?」
 「おまっ、それ誰から聞いた!?」
 「あなたのおかーさまと仲いいの知りませんでした?」
 「だぁぁぁー!あのばばぁー!」



 浩輔が頭を抱えている横で、樹里はクスクス笑いながら言った。
 
 「でも、良かった。千夏と浩輔と同じ高校で。」





 「……、バカップル…。」
 「こうくんっ!」





  


 でも、千夏もそう思っていた。
 昔いろいろあったせいで、不安だったのだ。
 今も心臓が動きすぎて、苦しいくらいだ。
 ぎゅっと、自分の制服の裾を握り締めた。

 「……。」


 すると、ポンポンと大きな手が千夏の頭を撫でた。
 上を見ると、優しく笑った樹里がいた。
 「大丈夫か?緊張してるの?」

 …私は、この笑顔が好きなんだ…。




 「うん、大丈夫だよ。」
 「そっか…、なんかあったら言えよ。」
 「……まぁ、お前は危なっかしいからな…。樹里がダメだったら俺に言え。」
 「こうくん…。」
 珍しくデレた浩輔の肩に、樹里は腕を回した。
 









 ねぇ…、私、ちゃんとやれてるよ?
 そっちはどうかな?
 ちゃんと私のこと、見守ってくれてる?
 約束…、したからね。



 「よっしゃ、入学式はじまんぞ!行こう!!」
 「「おー!」」