「梨穂、珍しく、泣かなかったな。」 帰りながら、乃樹がそういう。 「いつも泣いてるから、 今年はお父さんたちに涙見せないようにしたかったんだもん……。」 「そっか。梨穂、優しいな。」 「そ…んな……こと…。」 それだけ言うと、涙が溢れてくる。 今年も泣いちゃったな。 「やっぱり、泣き虫。」 乃樹はそういって、行き交う人に泣いているところを見られないよう、抱きしめ、隠してくれる。