そして、私達は路地裏へと入った。
麻美さんは私のお腹を蹴った。
『ゔっ…。』
私はその場にしゃがみこんだ。
『あんたみたいなちんちくりんが、でしゃばれるような世界じゃないのよっ!』
麻美さんはそう言いながら私のお腹をまた蹴った。
どうやら麻美さんは見えるところには傷を作りたくないようだ。
私はそう呑気に考えていた。
でも次の瞬間…、
右腕に激しい痛みが走った。
『っ!痛っ…。』
私は自分の右腕を見た。
すると真っ赤な血がダラダラと垂れていた。
私はまさかと思い、麻美さんを見上げた。
次の瞬間、私は見上げたことを後悔した。
麻美さんは不気味に顔を歪ませながら私の血で赤く染まったカッターをその手にしっかりと握っていた。
『痛い?…ははっ、あんたが大人しく別れるって言えばこんな思いしなくて済んだのに。』
『嫌っ!!私は別れたくないっ!』
私はそんなの我儘だって分かっていながらそう麻美さんの目を見て言った。
すると今度は両手でカッターを握りしめ、両手を上に振り上げた。
ーー殺されるっ…。
私は目をギュッと瞑った。
でも、痛みは襲ってこなかった。
『やめろ。』
その代わりに男の子っぽい低い声が聞こえた。
でも…、その声は有海くんじゃない。
私はゆっくり目を開けた。
すると、そこには見知らぬ男の子。
でも、とてもカッコいい。
小さな顔に、切れ長の目、高い鼻に薄い唇。
細身かと思ったら、しっかりと筋肉がついていた。
私は見とれていた。
フッと我に返った時に麻美さんの姿は無かった。
『大丈夫か?』
男の子が優しく聞いて来た。
『あっ…、はい…。
大丈夫です。』
私は咄嗟に嘘をついた。
もちろん右腕は隠して。

