身代わりの彼女。





有栖は、誤魔化そうとしているのかオロオロしている。

『麻美?何処のどいつだよ。』

『天宮財閥の一人娘だ。』

俺はそう答えた。

『天宮財閥ぅ?ちっ、あんなの潰してやる。』

『えっ?お兄ちゃんやめて!』

『有栖…。』

『有栖、お前なんて言われたんだ?』

それは俺がずっと聞きたかった言葉。

有栖は唇を噛みながら俯いた。

『………し……れって。』

『有栖、聞こえねぇ。』

有栖がバッと顔を上げた。

有栖の目からは大粒の涙がボロボロと落ちていた。

『っ!妊娠したから別れてくれって言われたの!』

……は?妊娠?

俺、そんな行為してねぇぞ?

『妊娠?』

『うっ…ん!』

『……。』

『ねぇ、大樹どうしても諦めなきゃダメ?別れなきゃダメなの?』

有栖は、今にも消えてなくなりそうなほど儚い顔をした。

『……。』

『大樹…、ごめんね…。』

有栖は俺に謝った。

俺はそれが何に対しての謝りか分からなかった。

確かめねぇと、いけねぇ。

『………ってくる。』

『え?』

『確かめに行ってくる。』

『えっ…。』

有栖は絶望したような顔をした。

『また、連絡する。』

そう言って俺は走り出した。

『待って!』

有栖のそんな声が聞こえたけど立ち止まってるひまはねぇんだ。

ごめんな…、有栖。