身代わりの彼女。





あの日の後、俺は翔吾や葉月たちになんでキスしたんだとか言われた。

なんでこいつらが知ってんだよ。

俺は少しイラついた。

でも、そのイラつきは葉月の次の言葉で後悔に変わった。

『有栖、帰って来てたのに!!
有栖、ちゃんと帰るねってメールしたのに!!

なんでっ!?なんで有栖の前でキスなんかすんのよっ!そのせいで有栖がどんだけ傷ついたと思ってんの!?

有栖、泣いてたよ。

アメリカに帰りたいって。』

ーーアメリカに帰りたい。

そうか…、俺は結局有栖を傷つけることしかできねぇのか。

『メールは来てた。でも間違いかと思ったんだよ!知らねぇアドレスだったし、第1有栖は2年だって言ってたじゃねぇか。』

『……じゃあさ、有栖が知らなかったら麻美さんと付き合うの?キスするの!?ふざけないでよっ!』

普段静かな潮山が俺を怒鳴った。

『……知ってたら、しねぇよ。

俺だって、逢いたかった。』

『じゃあさ、それを行動に移さねぇと始まんないぜ?』

『…そ…うだよな。俺、行ってくる。』

俺は教室を飛び出した。

俺は、校門に有栖の姿を見つけた。

駆け寄ったときに聞こえたのは、

『私、妊娠してるの。』

とか

『私、大樹と結婚するの。』

とか、意味不明なものばかりだった。

きっと有栖は素直だから全部信じてしまうのだろう。

『有栖。』

俺の張り付いた喉から出た言葉はそれだけだった。

有栖は振り返ることもなく、走り出した。