もう弟なんてやめてやる。

“彼氏”


雫から出た言葉に
目の前がクラリと歪んだ。


ドクンドクンと脈が速くなる。
自然と拳に力が入った。

俺の側から雫が、


イナクナル…


その時、
俺の中で何かがプツッと切れた。


─────行かせない。


他の男のとこへなんて
行かせない……!



────壊せばいいんだよ。


この瞬間、
俺に初めて悪魔が囁いたんだ。

…壊せば、いい。



『…ごめんね、雫』

『陸?』



雫の幸せを願いたいのに

やっぱり自分の気持ちには
嘘がつけない。


どうしても、

雫は手放せない…


この想いが報われないものなら
せめて、悪あがきさせて…