もう弟なんてやめてやる。

フッと笑いながら
俺の横を通り過ぎていって。

遠ざかってく町田の背中を
鋭い視線で見つめる。


雫が1度でも好きになった男…

また、雫が奪われるかもしれない。


「っ」


グッと拳を握りしめて
暴走しそうな感情を押し込める。

そのまま廊下の壁に
もたれ掛かった。


キーンコーンカーンコーン──…


校舎内を鳴り響く
チャイム。

授業が始まった合図だ。


でも身体が、動いてくれない…


陸の頭の中で
今でも鮮明に蘇るあの日の記憶。


───2年生の夏。


あの日、雫が祭りに行くと言って
浴衣を着たんだ。