もう弟なんてやめてやる。

「…陸?」

「!」


ビクッと肩が震えた。

視界に俺を覗き込む───、雫。



「どうしたの?トイレの前で。具合悪いの?」


心配そうに俺を見る
自分より小さい女の子。


「………」


そっ、と雫に触れそうになって
手が空中でピタッと止まった。


この手は、

さっきまで他の女に触れた…手。



「っ、何でもない。もう授業始まるから雫も教室行こっか」

「…陸?」



とりあえずこの場所から
離れたくて。

雫をあの男から遠ざけたくて。


俺は歩き出した。