少し、緊張で顔も体もかたくなる。
「陽南ちゃん、緊張?」
優しく聞いてくれるのは、
女子キャプテンの荒川風香<あらかわふうか>先輩。
地区大会では断トツのトップ。
でも県大会のベスト8どまりだって少し悔しそうに言っていたのを聞いたことがある。
―私にとってはベスト8でも十分すごいと思うんだけど…。
「はい、やっぱり、初めてなんで…」
少し控えめに答える。
そうすると、風香先輩はくすっと笑って、
「大丈夫。あたしも、陸も1年の時はがちがちだったから。」
陸、というのは陸哉先輩のことだ。
「えっ、先輩たちも…?」
「当たり前よ!! 陸なんか今でこそあんなに堂々としてるけど、初めての大会の時なんか、緊張しすぎてバスで吐いてたもん。」
そういうと、風香先輩は思い出したのか、くすくすと笑う。
「は、吐いたんですかぁ!!?」
あの全国にまで行った先輩が!!!?
私があまりに驚くから、風香先輩も爆笑している。
「そうそう!! だから吐いてないだけ陽南ちゃんのが落ち着いてるわよ!大丈夫!」
そういって、背中をぽんぽんとたたいてくれた。