翌日。

「ゆき、起きてるか?」

扉越しの北山君の声で目を覚ます。
枕もとの目覚まし時計は7時を教えてくれた。

「朝食の時間だ」

「………はーい」

むくりと布団から抜け出て、袖で目元を拭う。
彼を待たせたままなのも申し訳なく、パジャマ代わりのジャージのまま、部屋を出た。

「おはよう」

「……おはようございます」

「今起きたばかりか?」

頭を撫でられる。
否、整えてもらっている。

「はい、うっかりしてました。すみません」

「いいって」

先を行く北山君の一歩後ろを歩く。
彼と揃って食卓に着いた時には、皆もう食べ始めていた。

「基本、朝は忙しいからな。そろって食べるのは夕飯だけだ」

「そうなんですね」

一度にして指定席になってしまった位置に座り、二度目の立派な和食をいただく。
これぞ日本の朝御飯といったような豪華なそれに舌鼓を打っていると。

「ごちそうさま」

早い人は手を合わせ、居間を去っていくところだった。

「………私のせいですみません」

北山君も食べ終わり、広い卓で私ひとりが食べている。

「俺が勝手に待ってるだけだ。気にすんな」

だとしても、いたたまれない。
とにかくもくもくと箸を進めた。

そうしている間に、北山君は、ほかの人の食器を炊事場に持っていく。
間も無くして、水音が聞こえた。

ようやく食べ終わることができたら、残された私の食器を持っていく。

「お待たせしました」

食器洗いしている北山君に声をかける。

「そこにおいといてくれ」

濡れた手で指したのは、シンク横。
そこに食器を乗せた。

「何か手伝うことはありませんか?」

「じゃあ、そこの布巾で洗い終わった食器を拭いてくれ」

「わかりました」

私は指示通りにお手伝いする。
最後の一枚まで拭き終わると、ちょっとした達成感があった。

「その食器、ここな」

教えてもらった位置に片付ける。

「ありがと、助かったよ」

微笑まれ、頭を撫でられた。

「まだ眠いだろ。部屋でゆっくりしてていいぜ」

そう言って、背中を見せる彼を呼び止める。

「あのっ……」

「何だ」

「眠くないです。他に手伝うこと、ありませんか?」

「そうだなー」

北山君は考えるそぶりを見せた後。

「まずは着替えてきな」

言われて、自分の今の格好を思い出した。

「はいっ」

人の前に、まず、自分の用を済ませなければ。
私は急いで部屋に戻り、着替えを済ませた。