「はいはいそこまで」

大家さんの一声で双子の言い争いはピタリと止む。
自身に注目が集まるのを確認してから、大家さんは話し始めた。

「幸い、園田さんの部屋の隣は空いています。アキさん、そちらに移りませんか?」

「いいの?」

「異議あり! なんで兄さんと部屋を分けないといけないんですか!」

「以前から考えてはいたんです。お家賃2人分いただくのに、大きめとはいえ一部屋しか与えていないこと。今まではお二人の了承の上でしたが……」

アキ君に縋るような目を向けられ、シュウ君に睨まれながら、大家さんは微笑んだ。

「この際です。ひとり一部屋使ってください。新しい契約書はすぐ作りましょう」

話しはここまでとばかりに手を叩き、反論を許す間もなく、大家さんは居間を出た。

あまりの行動の速さに、怒りのやり場を失ったシュウ君。

その隣には、解放を目前にぽわぽわしているアキ君。

残された私たちは、どうしたら良いのでしょう。

席を外しづらいし、かといって、部外者感も捨てきれない。

興奮で眼鏡を曇らせる青木君は、最後まで見届けるつもりだろう。
彼のことを楽しそうに見ている中島君も最後まで付き合うはず。
北山君は……台所にいますね、いつの間に。

………とりあえず私は黙祷して、時計の短針の音を数えることにした。