辛い体勢で浮きつつあった額を再び畳に押しつけたところで、青木君が口を開いた。

「わかってましたよ、あなたが同志でないことくらい………」

「えっ……」

衣擦れの音がする。
正面に青木君が正座した。

「あなたに否定する隙を与えず、萌え語りしました。そのことで、あなたが悔やむ必要はないんです」

「青木君……」

「嬉しかったんです。僕の持ってるマンガを面白かったと言ってくれて。僕の話しを聞いてくれて。………それでつい勢いよく勧めていましました。あわよくば、同志になれないものかと」

「ほんとに申し訳ないです……」

「謝る必要はありません。顔をあげてください」

言われた通り上体を起こすと、畳についていた手を握られた。

「これから本当の同志になればいいのです。あなたにはその素質があります! なんたって、僕の持ってるマンガを面白いと言ったのですから!」

正面から真剣な表情で言われるものだから、少し引いた。

「初めから語り合うのは無理でも、聞いてくれるだけで嬉しいものです。たまに賛同などいただけたら、泣いて喜びます」

次に青木君は手近なマンガの山を引き寄せて。

「初心者でガチムチなどはハードルが高いでしようし、こういうソフトなものからどうぞ。ストーリー重視の綺麗な絵のものを厳選しました! 一見、少女漫画のようでしょう? いや、女性向け漫画でありますが!」

勧誘を始めた。

それは、ここで初めて読んだマンガのように、可愛い絵と色使いで。
男子学生2人が密着しているものだった。

少女漫画と言われたら、信じてしまいそうだ。

「そ、そうだね……」

勢いに押されて、勧められた数冊を受け取る。

青木君はホクホクと、満足げに笑っていた。
私はそれに苦笑いしか返せない。

おいでませ腐の世界。





青木理央という人物は、欲に忠実な腐男子のようです。