福井氏ー、福井氏ー、と。

授業合間の休み時間のたびに、青木君は私のところに来て、同じように語って去っていく。
だから、ついに訊いてみた。

「男子同士でいなくていいの?」

「ん? 何で?」

現在昼休み。
近くから椅子を借りて、私の席で大家さんお手製のお弁当を食べる。

「何でって……」

「僕が男の所に行ったら、当事者になってしまいます。そちらに魅力がないことはないのですが、僕は見る専なのでね。もしや、福井氏は迷惑しているのですか?」

「迷惑だなんて、そんなこと………」

前半言ってることはわからなかったけど、青木君のおかげで、クラスで孤立せずに済んでいるのは事実。
だから、すごく楽しい。

「だったらよいではないですか。僕は、男子といるより、同志である福井氏と一緒にいる方が楽しいのですよ」

「………っ」

笑顔で言われ、罪悪感で胸が痛んだ。

私は、同志なんかじゃない。
青木君の顔が見れなくなっていると。

「………今日帰ったら、僕の部屋に来てください」

「えっ?」

「ここではできないお話し、もっとしましょう」

彼の誘いに、頷くことしかできなかった。