シンデレラガール

左側に居る、橘先生。

あたしの右耳に付けられたイヤフォンの線が、何だか赤い糸のように見えた。

撮影は中盤に差し掛かりつつある、物語(ストーリ)。

お互いに好意を寄せ、禁断の恋を実らせ、密かに育む愛のカタチ。

右耳から聞こえてくる音楽なんて、これっぽっちもあたしは知らない。

でも、葵なら、、、


「良い曲」


なんて、言うのかな?


「だろ?」


橘先生は小さな、本当に小さな笑みを溢す。

特に言葉を交わすことなく、進む車に身を任せる。

触れ合いそうなのに、ほんの少しの距離を保つのは、生徒と教師の関係だから、、、

ロクに恋もしたことがないけど、葵の気持ちがわかる気がする。