シンデレラガール

車の中で音楽を聴きながら、台本を眺めている神崎瑛太。

現場に近付くにつれ、神崎瑛太が纏っていたオーラが、役の橘健都へと変わる。

だからあたしも瞳を閉じ、葵へとスイッチを切り替える。

橘先生と葵。

もし2人が同じ空間に居たら、どんな会話をするのだろう。

どんなことをして、時間を過ごすのだろう。

神崎瑛太と言う人間と、普段のあたし。

そんな2人なら、あたしは神崎瑛太に必要以上に声を掛けることはないだろう。

でも、今のあたし達は違う。

神崎瑛太は、橘先生

あたしは葵として、橘先生を見つめる。


その視線に気付き、神崎瑛太はあたしのことを見る。


「なん、、、」


神崎瑛太は、そこで言葉を止めた。