吃音症にまでなってしまった彼女を憐れむどころか、パーラー家の恥さらし者だと家に閉じ込める始末だ。
彼女をおもんばかっているのはいつだって血が繋がっていない家政婦や執事たちばかりだ。
「……父は昔からそうだったじゃない」
そんな状況にすっかり慣れてしまったアビーは、怒りをあらわにするクローイに対して今さらだと首を振り、大きく息を吐いた。
そこには落胆の表情があらわれていた。
そんな彼女だが、どうやら今回に至っては、『諦め』はないらしい。
なにせアビーは、父親から結婚を言い渡されたすぐ後で、クローイに電話をしてきた。少なくとも、アビーは現状から抜け出したいと思っているのではないか。クローイはそう思った。
「それで? あなたはどうしたいの?」
確信に迫るため、クローイは口を開いた。
「にっ、逃げたい!! 手を貸してほしいの! なんでもするから、お願いよっ!!」



