しばらく歩き、着いた場所は玄関だった。
そして先生は振り返り、私に言った。

「・・・落ち着いて聞いてね。
お母さんが・・・事故にあったらしくて...」

それから、先生の言葉は聞こえなかった。

ただ先生に誘導され、先生の車に乗り、母が運ばれた病院に向かった。


母がいる病室に着いたが、母の顔の上には白い布が被せられていた。

白い布をとると、母は眠っているかのように目を閉じていた。

母に触れると、まだ少し温かった。

病院の先生によると、母は病院に運ばれたとき、すでに死んでいたらしい。
トラックにはねられ、地面に体を叩きつけられ、即死だった、と先生は言った。

事故にあったとは言えないほど、母の顔はとても美しかった。
だから、死んでいるとは思えなかった。

いつも母を起こすときするように、母の頬をつまみ、強く引っ張った。

そうすると母は、こう言ってすぐ起きる。

『痛い!痛い!起きるからやめて!
花菜子ちゃん!!』


しかし、母は起きなかった。
もちろん、何も言わない。

いくら強く引っ張っても起きなかった。


不思議と涙は出て来なかった。

私は母をじっと見つめた。

それから少し顔を上げ、窓の外を見た。

(そういえば、今日の占い最下位だっな...)

そう思い、窓の外を眺め続けた。