バカ彼氏

そんな話をした日の放課後。

私は彼氏の棚田と一緒に帰り道を歩いていた。

「大人ってずるいよねー」

私がしみじみと言うと、

棚田は噴き出して

「急にどうした」

と言った。

私より少し背の高い棚田は、

私の左側で優しく笑っていた。

「ねぇ。

 棚田っていつも私の左側にいたっけ?」

「わかんない」

こいつ考える事を放棄しやがった。

「だよね」

私は優しいからそれ以上突っ込まないけど。

それに聞かなくったって何となく分かる。

多分棚田はいつも私の左側にいた。

棚田のいる左側は違和感がなかった。

「あ、そうだ」

私は棚田の左側に移動した。

棚田が私の右側に来るところ。

「え、なに、なんか」

棚田がソワソワしだした。

私もソワソワしだした。