「もう5時だ〜寧位帰るよ?」



「うん...帰る」




まだまだボーッとする頭を働かせて、帰る準備をする。



机の中に入れていたケータイを取り出して、制服のポケットに突っ込んだ。




でも思いとどまって、ポケットに突っ込んだケータイを取り出して、眺める。



電源をつけてるわけじゃないのに、いつまでも白いスマホを眺める私に梨沙子は痺れを切らしたみたい。



ツカツカと足音を立てて、私の隣に並んだ。




「寧位〜?

ってそれ画面真っ暗じゃん!」


なんで電源もつけずに眺めてんの?って付け足して不思議そうだ。



それもそうだよね。


ただ眺めてるだけなんて変だよね。




でもね、

このスマホが守谷との接点になってる気がするんだ。




もしあの時、このスマホを教室に忘れたりしなかったら。


守谷のあんな一面を知ることもなかったんだよね。




いつ思い出しても新鮮に思い出せる。



おとぎ話に出てきそうな王子様。


クリーム色のかかった茶髪が風に揺れて、キレイで。




なぜかそれを思い出すだけで笑顔になれる気がするよ。





「フフッ...なんでもないよ〜」



帰ろ!っと梨沙子に声をかけて早足で教室から出た。





やっぱり、好き。


守谷のことが、好き。




いくら突き放されても、それだけは変わらないよ。

譲れないよ。





「.....好き」


「えっ?!
寧位、私のことそんなに好ー...」


「わー!!

違う違う!!!」









辛いことがあっても、
恋をしちゃうと1日1日が楽しくなる。


キラキラ輝いて見える。






だから明日もきっと楽しくなる。


そう、確信できるよ。