「…よし!!充電完了!行くぞぉ」
俺は菅原を解放して、他の男子を連れてテントを出た。
「……先輩、行かないで」
俺には菅原の声が聴こえなかった。
「…?」
俺がなんか気になったから後ろを向くと…、菅原の姿は消えていて。
まぁ、ウォーミングアップしにいったのかな?
なんて軽く考えていた。
1年女子100m…招集はもう掛かってるはずなのに…。
菅原の登録が終わっていなかった。
マネージャーの深瀬(ふかせ)が、キャプテンである俺に登録完了すると連絡を貰う予定。
でも、なかなか深瀬から連絡が来ない。
【先輩!】
深瀬の焦った様な声が耳に響く。
「…なんかあったか?連絡が随分と遅いけど…」
いつもならすぐに連絡が来るはずなのに…。
【菅原天空が登録完了してません!!】
菅原が……?
俺の頭は既に真っ白。
どうしてだよ。
今日の為に沢山練習してきたんだろ?
可笑しい。
いつもより、硬い表情はしてたけど…。
「……捜すから、深瀬は他をサポートしてくれ」
【分かりました!こちらも見つかり次第連絡します】
深瀬との電話を切って、俺は招集場所とは掛け離れた、運動場に向かう。
「…菅原っ」
なんで、お前は俺の予想を超えるんだろうか?
理想と予想は違う。
俺の理想は、菅原だ。
綺麗なホームで走る、無駄の無い走り。
予想を超える菅原の行動。
毎回、俺は振り回されるよ。

