俺とひろちゃんは、呆然とした。
まさか猛まで……
「でも俺の場合、青山さんは恋愛って訳じゃ無いんだよな。」
「どういうことだ?」
猛はしばらく黙って考えていたが、やがて口を開いた。
「なんていうか……憧れてるんだよな。青山さんに。」
憧れ………。
「青山さん、普通クラスにいるくせに実は特進クラス並に頭いいし、何げにかわいいし、何でもソツ無くこなす、そんな漫画に出てくるスーパーマンみたいな青山さんに、憧れてるんだよな。もっとも、青山さんは女だから、スーパーウーマンになるんだけど。」
猛はちょっとだけ笑って、続けた。
「最初は、何だこの生意気な奴って思ってた。自由人で、協調性無くて、適当な奴とか思った。でも、違ったんだな……。」
ちょっと言葉を考えてるようにうつむいたが、やがて顔を上げて、はっきり言った。
「ただ不器用なだけだったんだな。」
空に向かって言った猛の横顔を見ながら、俺は心から猛の事を尊敬した。
青山さんと俺とひろちゃんは、同じ中学出身だったけど、青山さんの態度が実はただ不器用なだけだと言うことに気付いたのは、中学3年になってからだった。
それを猛は、たった1年一緒にいただけで気付いた。
と、突然猛が笑い出した。
「俺はお似合いな気がするな。前森と青山さん。2人とも頭いいし、素直じゃないし、不器用だし。」
その言葉に、俺とひろちゃんもちょっと吹き出した。
確かに、前森認めちゃえばいいのに。
バレバレなんだし。
「俺は2人を応援する。お前らは、どーする?」
いつになく真剣に聞いてくる猛に対して、俺はまた吹き出してしまった。
「なんだよ。」
「ばーか、変な事聞くなよ。応援するに決まってるだろ。」
横でひろちゃんもしっかりうなづいた。
「そっか……そうだよな。悪い、変な事聞いたな。」
そう言った猛の表情は、
この上なく嬉しそうだった。