「ちーさん、ちーさん!今日前森くんと一緒に来てたよね!」
教室に着いた途端、待っていたのは周りの席の子たちの質問攻めだった。
「あ、うん。たまたま玄関で会っただけだけど、何か?」
普通なら、ほとんどの子がここで引き下がるだろう。
しかし、相手方は一向に引き下がらない。
何故なら、私だからだろう。
私はこの高校に入学してからそういう浮いた話はほとんど無い人間だしね。
強いて言うなら……柊平と恒平と仲が良すぎるとかいうことくらいかな。
「何で教室まで一緒に来たのー?」
「いや、なんとなく。」
「もしかしたらー、前森くんちーさんのことが好きなんじゃないのー?」
その言葉に、私は笑いそうになった。
ありえない。そんなわけ無いじゃん。
今時の若い子はなんかあればすぐ好きなんじゃないのー?と馬鹿の一つ覚えみたいに言う。
その姿はひどく滑稽だ。
こみ上げる笑いを堪えて、そんなんじゃないと思うな。と答えると、周りの席の子たちはつまらなそうに自分の席へ戻っていった。
私はその姿を見送ると、メガネをかけて本を読み始めた。