「も...もう‼︎ 私の事はいいから‼︎ さっさと練習するよ‼︎」 いつもより数倍大きい声を出した陽架里に、顔を強張らせながらコクコクと頷くと、ベースを持ち直す。 それから、譜面台に乗せているチューナーの電源を入れると、口を開く。 「───いいな...好きな人、か...」 「好きな人? どうかした? あ、さては好きな人出来たの⁉︎」 キラキラした、期待の目で見てくる陽架里からゆっくりと視線を外す。 「いるわけないって。なーんか出来ないんだよね」 そう言った後、ハハッと苦笑いをする。