「……バカ兄貴。」
「本物のバカにそんなこと言われてもなぁ。」
「なんだと!?」
「それに――」


兄貴は言葉を切ると妖艶に笑った。
伸ばされた手が、俺の顎を捕らえる。
次の瞬間には、唇に柔らかい感触が残った。


「可愛くないこと言ってると、優しくしてあげないよ?」


そう言ってまたキスをしようと近付いてくる兄貴を、力一杯引き離す。


「兄貴が優しいときなんてないだろ! 」
「酷いなぁ。いつも優しいだろう?」
「どこが!」
「全くもう。ああ、そう言えば今朝のお仕置きしないとね。」
「え……」


兄貴がニコッと笑うと、俺の視界はぐるっと回転した。
背中はベッド、上には兄貴が跨がっている。
起き上がろうにも頭の上で腕を捕られて、身動き取れない状態だった。


「な、なんだよ!やめろよ!」
「意地っ張りな海も好きだけど、素直で可愛い海が見たいな。」
「な、何する気だよ……」
「ん?何だろうね?俺が優しいってこと分からせてあげようかなって。」
「い、いいです!遠慮しときます!」
「遠慮だなんて海らしくない。」