その日は、一度私と渡部さんと佐伯くんで駅に集合して、みんなで足立家へ向かうことになった。

「あっ、おはよー、浅野さん」
「おはよー。あ、私最後?」
「私たちもさっき来ました」
「じゃあ、行きますかー」
「あれ、浅野さんカバンでかくない?何もってきたの?」
「せっかくだから渡部さんに宿題教えてもらおうと思って」
「あっ、じゃあ教えられるところはどうにかしますね」
「あー、その手があったかー!」

なにげに渡部さんの私服を見るのもこれがはじめてだった。
夏らしい涼しげな色合いのギンガムチェックのAラインワンピースをそつなく着こなし、休日もその清楚さを微塵も崩すこと無く保っている渡部さんは確かにかわいかった。
かわいいのでちらちらと必要も無い目線を送っていると、佐伯くんもこちらと同じ動きをしているのに気づく。
ははあ、男子ですなあ。
・・・私もだけど。

「ていうか浅野さん、足立の家行ったことあったんだ」
「うん、水運ばされちゃって」
「えー、それはないわ」

それから、私と渡部さんが口々に足立くんの兄妹について話しているうちに、足立家に到着した。
久々にやってきた私たちを、好己さんは一個あたり定価三百円のミニカップアイスで歓迎してくれた。
佐伯くんはこのおもてなしに一発で好己さんに懐いた。
まっ、現金な奴め。
・・・私もだけど。

「まあ、ゆっくりしてってね。絵美も亨もいないし、ちょっとは静かだから」
「遊びに行ってるんですか」
「絵美はね。亨は夏期講習。ほら、今年受験だから」
「あ、そっか」

私はふんふんと頷くと、我々が滞在する予定の和室にひょこひょことやってきた人影に目を向けた。
あれ、謙也くんは夏期講習に行かないのだろうか。