雨雲もどこかへ消し飛び、校門を目指す過酷な登山道には容赦なくさんさんと太陽が照りつけるようになった。
夏の到来である。
期末考査も先日終わり、夏休みまでは指折り数えるほど。
一学期って、案外短いんだよね。

授業も午前中だけだし、気持ちは軽いーーー
こともない。階段を上がっている時は。
あまりの疲労感に私はこっそりネクタイを緩める。
校門前で、ネクタイを緩めすぎた男子生徒が、生活指導の先生に捕まってだらしないと怒鳴られていた。
うちは、偏差値があまり高い高校じゃないけどーーーいや、もしかしたら高くないからかな。校則は割とちゃんとしている。
髪は染めてはいけないし、ピアスも禁止。スカート丈や襟元も、そこまでかっちりしなくていいけど節度は守るようにと先生が見張っている。

「おはよー、浅野さん」
「あっ、おはよ佐伯くん」
「見て見てあの先輩、中にすごいTシャツ着てる」

声をかけて横に並んだ佐伯くんの指差す先を見ると、制服のシャツの内側に派手なピンク色のTシャツを着込んだ上級生がいた。
色自体どうかと思うが、極めつけに目が痛くなるような黄色で『Congratulations』の文字が踊っている。文字通りおめでたいTシャツだ。
生活指導の教師が極めて微妙な表情をしていたので面白く、私たちはくつくつと笑いながら校門を通りぬけた。