謙也くんはゲームが好きらしく、特に複数人で集まって行うバトルゲームを好むらしいのだが、彼の弱い事はこの上ない。
私は、ゲームの腕前は人並みだし、だいいち家に無いので慣れていないのだが、それでも彼は弱いと断言しよう。
だいいち、謙也くんが私にゲームを挑んだのは、そのあまりの弱さに亨くんたちから相手にされなくなった矢先に弱そうな女がのこのこ家にやってきからだという。
正直哀れだ。

私に勝つよりも、サブカルに滅法疎そうな渡部さんを狙ってみてはどうかと私は助言したのだが、彼には弱い女を虐める趣味はないらしい。
どの口が。
一応言っておくと、彼は絵美ちゃんよりも弱い。

「まあ、別に相手するぐらいいいけど。ていうか、私が行くたびにケーキ出さなくていいよ」
「俺もそう言ってるんだけど、好己が聞かないから」

好己さんは、私が家へ行くたびに嬉しそうにケーキを出してくる。
これはカロリー地獄也と考える事もあるにはあるのだが、なんせ美味しいし、好意を無駄にしたくもないし、美味しいのでいつもごちそうになってしまっている。
ちなみにこのケーキ接待は渡部さんが来ただけでは起こらないらしい。
渡部さんが足立家に慣れきっている証拠でもあるのだが、正直ケーキは欲しいらしいので私が行く日にはついてくるようになった。

「それにしても、うちのクラス、中だるみが半端じゃないな」
「え?ああ、なんか最近多いね宿題忘れとか予習忘れとか」
「あいつらは忘れてるんじゃない。わざとやってないんだ」
「うーん、まあそうですねーーー」

足立くんは突如クラス情勢について語りだす。
かくいう私も中学生までは立派に中だるんでいたのだが、何せ足立くんと渡部さんのプレッシャーがあるので、今のところ模範的に学業に励んでいる。
もしかしたら、成績あがるかも。うふふ。

「ていうか、全員馬鹿だよな。生徒を当てる系の授業で張り合いが無さすぎて本気で退屈。もうちょっとぐらい偏差値考えとくんだったな」
「それは悪うございました」

足立くんって、結構露骨に人を馬鹿にするけど、スペック故頭が上がらないので困る。
渡部さんはそんな彼よりも頭がいいのに微塵も鼻にかけていない様子で本当に素晴らしいなと思う。