渡部さんと仲良くやってやるように言われたものの。
なんだかんだで足立くんと一緒にいる事の方が多い気がする今日この頃。
だって、出席番号近いんだもん!
日直も一緒だったし、委員会も一緒。ついでに言えば委員会の当番の日も一緒。
掃除当番だって一緒だし、昼食も一緒。休み時間も話す。
だって、席近いんだもん!

五月に入ってもブレザーを着用しなければならないというのは、はっきり言って酷であると我々新入生は毎朝声高に主張している。
かたや、学校は山の上。午前八時には、案の定手荷物と化したブレザーを伴った海崎高校の生徒が登校を始める。
にじんだ汗を拭いながら、私もその中に紛れていた。後ろから声をかけられる。

「浅野さん、おはようございます」
「おはよう、渡部さんーーー汗やばいね」
「はい。この時間は後悔するんです。この学校を選んだ事」
「だよねー」

渡部さんも朝から自然とネガティブモードのようだ。
彼女は運動が苦手らしい。まあ、そんな感じはしてたけど。
四月に行われた体力測定でも、著しく持久力に欠けているようで、最終トラックではみんなの「ガンバレガンバレ」という声援を受けながら息を切らしている姿が見られた。
一生分の恥をかいた気がしますと渡部さんはうなだれていた。
残念、あと二回は恥かくよ。

「もうすぐ中間考査ですね。浅野さんは、中学の時と勉強方法は変えましたか?」
「あっ、そうだっけ。まだ何もやってない」
「そうだっけって浅野さんーーー二週間前ですよ?」

渡部さんが、信じられないものを見るかのように私の顔を覗き込んだ。
つられて、私も同じ表情になって渡部さんを見つめ返す。
だってーーー二週間前ですよ?