どうにも景気の悪い日だった。
しとしとと、大して激しくもないが明らかに降り止む様子を見せない小雨。
風一つ通らないじめじめとしたプレハブ教室。
横目でしきりに他人をうかがうクラスメイト。

ーーー良くないね。
こういうのは、実に良くない。

とは思いながらも、私だって担任と決して目を合わせないように俯きがちにしているわけだけど。
ついでに、勇者の名乗りを待ちわびてる。

休み時間はあんなにやかましかったのに、なんだってホームルームではみんな沈黙しちゃうんだろう。
こんなに意気地なし、というか妙に引っ込み思案な子が集まったクラスって、私は初めてだ。

「誰か、いませんか?ーーーえっと、くじ引きで決める・・・?」

担任を受け持つ、新任の若い女教師が困ったように小首をかしげながら言った。
そのとたん、拒否の意思だけは、明確に表す一同。
悪いことをしてしまったような顔になって肩を落とす、先生。
これはあまりにかわいそうっていうか。

仕方がない、誰かに期待するだけじゃダメだ。
自分が動かなくては・・・!

我ながらすごくかっこいい感じに決意を固め、私はばっと顔を上げた。
思いっきりクラス全体を見渡す。
よし、決めた。
おもむろに天高く右腕を突き上げる。

「浅野さん・・・」

一瞬にしてクラス中の視線が私に集まった。
先生が明らかに安堵した様子で私の名前を呼んだ。
私は、クラスの命運を決するべく、高らかに宣言した。

「クラス委員長、渡部さんがいいと思いまーす!」

視線が、私の席から教室の対角へ飛ぶ。
彼女は、一瞬止まると、ワンテンポ遅れて「えっ」と間の抜けた声をあげた。