地平線に軍気が揺らめく。

「いよいよ来たな」

私はエメラルド色の甲冑に身を包み、白馬の背からその様子を眺めていた。

…この戦いに備えて準備した女神兵は、黒の旅団と同じ二千。

現在女神国には十万の兵がいるが、数で圧倒するというやり方は私が好まない。

いかに相手が手段を選ばぬといっても、こちらも同じようにしていては私の騎士道に反する。

だからこちらも黒の旅団と同じ数しか揃えなかった。

これで五分と五分。

お互い何の言い訳も出来ない条件で戦う事ができる…筈だった。

しかし。

「む」

最初にそれに気づいたのは、私の隣で馬上から敵軍を見ていた紅だった。

彼は目がいい。

それ故に、女神軍の中で誰より先にその事に気づいたのだろう。

…黒の旅団が近づくにつれて、他の兵達もその事に気づき、少しずつざわめき始める。

無論、私も気づいた。

…手綱を強く握り締め、怒りをあらわにする。

「随分と舐められたものだな」

私達の前に姿を現した黒の旅団は、たったの百騎程度しかいなかったのだ。