とりあえず黒の旅団の刺客、漆黒を退ける事には成功した。

「乙女、傷は大丈夫か?」

表情を変える事なく紅が言う。

「ああ…不覚はとったものの幸い傷は浅い」

私は自分の首に手を当てた。

…とはいえ、もし紅が助けてくれなかったら、私も殺された女神兵と同じ末路を辿っていたのだろう。

その事を考えると背筋に冷たいものが走った。

…闇に紛れ、こちらの死角から命を狙ってくる敵。

これまで私が戦ってきた騎士や兵士とは全く違う戦術を使う。

一筋縄ではいきそうにない。

そんな事を考えていた時だった。

「乙女!」

一人の女神兵が私達の元に走ってきた。

「…どうした?そんなに慌てて」

「はい…砦門…砦門に…」

兵は酷く取り乱している。

また何か良からぬ事が起こったに違いない。

「わかった、すぐに行く」

私はそう言って紅の顔を見る。

「やれやれ」

口ではそういうものの、紅の表情は険しいものだった。

「どうも俺も乙女も、平穏とは縁のない人間らしい…」