呆れる紅をよそに、私は早速行動を開始する。

甲冑に着替え、夜の城下町へと出て行く。

…兵達は私の命令通り三人一組で行動していた。

これで何かあっても、すぐに近くの兵に助けを求める事ができる。

…私は単独行動だった。

もし刺客が狙っているのならば、三人の兵より一人の私を狙ってくるだろう。

兵が傷つくよりは私が相手する方がマシだ。

つまり私は、刺客にせよ魔槍の呪いにせよ、おびき出す為の囮という訳だ。

…紅は私の真意をすぐに見抜いたらしく、

「自分の身よりも兵を案ずるとは…相変わらずの甘さだな」

などと苦言を呈していた。

どうせ一国の主としては失格だと言いたいのだろう。

ならば失格で結構だ。

…私は憤っていた。

どんな状況であろうと、私を慕って集ってくれた兵達が傷つくのは見過ごせないし、ましてや命を落とすなどという今の事態は我慢がならなかった。

もう一人も兵は殺させはしないし、殺した張本人にはそれ相応の償いをさせるつもりでいた。

その為ならば私の身を餌におびき寄せる事くらい、喜んでやってのけよう。

…女神国に手を出した事を、必ず後悔させてやる。

私は甲冑の下に、静かに闘志を燃やしていた。