翌朝。

「乙女…乙女…!」

私は部屋の扉をノックする音で目を覚ました。

…まだ夜も明け切っていない。

外は薄暗く、太陽すら顔を覗かせてはいなかった。

先の戦以来こんなに早くに起こされる事はなかった為、私は睡魔を振り払うのにいささか時間を要していた。

やっとの思いでベッドから起き上がり、寝間着の上にカーディガンを羽織って部屋の扉を開ける。

「何事だ…?こんな早朝に…」

目を擦りながら言った私は。

…兵士の緊迫した表情で、何か憂うべき事態が起きたのだと瞬時に悟った。

「…どうした?」

一瞬にして覚醒し、私は真剣な眼差しを兵士に向ける。

「はい…申し訳ありません…その…」

その兵士は、この国が女神国になってからの新兵だった。

まだ戦も経験した事がなく、戦いすらもした事はなかろう。

だから、異常事態に対する免疫というものがない。

顔は青白く、言葉を紡ぐ唇は酷く震えていた。

「落ち着け。落ち着くのだ」

私は兵士の肩に手を置き、柔らかく微笑みかける。

「さ、どうしたのだ?言ってみろ」