じっと魔槍を眺める俺に。

「どうだ、何かわかったか?」

焦れたのか、玉座から乙女が声をかける。

「…ただの槍ではないな。相当な業物である事には違いないが…それ以上の事はわからん。この槍に何か良からぬものが宿っているのか、と問われても、そのような類の事は門外漢でな」

「そうか…」

少し残念そうに呟く乙女。

その乙女に。

「この槍、俺に預けぬか」

俺は尋ねた。

「何?」

驚いたように乙女が顔を上げる。

「魔槍だぞ?」

「ああ。肩書きはな」

俺はニッと笑う。

「まさか紅…貴方は目に見えぬ力など信じぬ、などと言うのではなかろうな?その考え方は危険すぎる」

乙女の言葉は、俺を心から危惧するものだった。

その心配は心地よいものだ。

「そうは言わんさ。目に見えぬ力を否定するというのならば、仲間の信頼や兵を魅了する力をも否定する事になる。お前の俺に対する愛情もな」

「ば、馬鹿!!」

頬を赤らめる乙女。

実にからかい甲斐がある。

「しかし呪いだの祟りだのは話が別だ。俺は不信心でな…方便で神の加護は語るが、実際にそのようなものはアテにはしていない。無論呪いや祟りもな」

俺は魔槍を見上げた。

「仮にコイツにそのような力があったとしても、俺がねじ伏せてやるさ」