私が何かを感じ取ったのに気づいたのだろう。

「お分かりになりますか?」

女性が呟く。

「この槍は、多くの騎士や武器商の手を渡って私の手元にやってきた魔槍にございます」

「魔槍?」

物騒な響きに、思わず声が大きくなる。

「はい」

女性の表情が深刻なものに変わる。

「あくまで人づてに聞いた噂でございますが…私の元に来るまでに、三つの国に争いを引き起こし、数多くの人間の血を吸ってきた呪われた槍…その呪いは今も健在で、一国を滅ぼすほどの邪悪な力を秘めているのだとか…」

「待て待て!!」

あまりに不吉な話に、私は女性の言葉を遮る。

「そのような槍を私に引き取れと言うのか?そなたは我が女神国に不吉を運ぶ気か?」

そう言うと。

「非礼は重々承知の上でございます!!」

女性はその場にひれ伏した。

「このような呪われし品物を女王陛下に献上する事など、斬首ものの無礼とはよく心得ているのです。ですが!」

恐る恐る顔を上げ、女性は哀願にも似た瞳で私を見る。

「最早このような曰く付きの品、どこにも引き取り手がなく…私もまた、このような槍をいつまでも手元に置いておくのは恐ろしゅうございます…かといってこんな物騒な槍をそこいらに捨て置く訳にもいかず…」

今にも泣き出しそうな声で女性は言った。

「もう頼れるのは、女王陛下しかおられぬのです。どうか戦女神と呼ばれたその加護の力で、この魔槍の呪いを封じ込めてくださいませ…!」