「ありがと~。じゃあ次行きましょう!」
買ったばかりらしい赤い交通安全のお守り袋を大事そう抱きかかえて、ジャスミンが戻ってくる。僕達ははいよと立ち上がった。
次は、あの神社だな。頭の中で最短ルートを描きながら僕はぼんやりそう思った。
なら、あの遊歩道が一番近道だ。
「お、ちょっといいな、この道」
友達がひゅうと口笛を吹く。人が5人ほど並ぶと一杯になってしまうほどの幅の道。その横には小川が流れ、反対側には民家が立ち並んでいる。そして、家と道、川と道の間にずら~っと並ぶ、桜並木。
「花見の時なんか凄いだろうなあ!」
そういうから、うんと頷いた。ジャスミンは長閑デスネ~などといってニコニコしている。
「桜の時期は人でいっぱいだよ。朝から晩まで。ここがずーっと人波で埋まって・・・」
手で指し示しながら僕はそう話し、広げた自分の手の先の方を見てハッとした。
その方向には、あの空き地。
空き地には一本の大きくて年老いた桜の木が。
そして、その下には―――――――――――――あの人が。
思わず立ち止まって、マジマジと凝視する。相変わらず乱視なのに眼鏡なしの僕。視界はぼんやりと歪んで、日差しの下でユラユラと揺れている。
だけど。
だけど・・・・あれは、彼女、じゃないか?