僕の日常から、あの桜の木がなくなった。

 
 
 鯉のぼりがゆっくりと青空を泳いでいる。

 それを見ながら、僕は大学の友人と交換留学生でうちの大学に来ているカナダから来た女の子を連れて歩いていた。

 カナダからの交換留学生の女の子と僕は何の接点もないのだけれど、僕の友達が「カフェで英語で会話しよう」とかいうサークルに入っていて、それで知り合ったようだった。

 古くからの神社の多いこの街の案内を頼む、そういわれたのが数日前。

 じゃあ、バイトが連日で入るゴールデンウィーク前にならいいよ、そう応えて、僕はなんちゃってガイドをすることになったのだった。

 といっても神社に関して興味があるのはそのジャスミンという名前の女の子の方で、すでに片言とは言えないレベルの日本語をペラペラ喋りながら自分から住職さんを突撃している。だから僕と友人は本当に案内だけでよくて、暇で境内をぶらぶら~っとしている休日だった。

「ああ、いい天気だな~」

「ほんと、ちょっと暑いくらいだね」

 学生食堂くらいでしか会わなかった同級生のその友達と、色々と話した。その点では今日と言う日は決してムダではなかったよな、そう思って満足する。

 肌が白くて背が高く瞳が青い女の子を連れて地元を歩くなんて、それって一種の罰ゲームかなんか?そう思うほどには目立つのだ。今晩には、話していないはずのうちの家族もきっと知っているに違いない。そして、友達カップルにひっついて歩く可哀想な息子(兄貴)という会話になるに違いない。

 ま、別にいいんだけど。