「じゃあ」 「あ、紗南!」 思い出してしまった記憶を消し去るように別れを告げると教室を出る。 小学校から一緒の美由紀にも話していなかった剣道をやめた理由。 私は、逃げたんだ。 「紗南!」 校門を出たところで呼び止められた。 立ち止まって振り向くと、見慣れた顔。 「浩太」 「よ。どうした?」 結構ひどい顔をしていたんだろう。 私の顔を見るなり怪訝そうな表情をする。 市川浩太。 高校で知り合った友達。