「てか、なんで一番隊にもぐりこんでたんだよ。…気づかない俺たちも俺たちだけど」
「この城にいたのは、まだ幼いころだったからな。面影はあっても誰も覚えていないだろう。それに、まさか騎士にとは思わんだろうからな」
「…まんまとその手にはまったってことか…」
リュウは困ったように頭をかいた。
「…恩は忘れないと思ってたんだけどな。こんなに側にいたのに、俺は気づかなかったんだな」
そうだ、王子がリュウの村を救ったんだと言っていた。
ということは、レンがリュウにとっての恩人ってこと。
「無理もない。リュウはあの時極限状態だったんだ。しかも、その日くらいしか顔を合わせていない。覚えていないのも無理はないし、さっきも言った通り、気づく方がおかしな話だ」
「…じゃあ、改めて礼を言わせてくれ」
リュウがレンに向き直る。
「王子、あの時は、本当にありがとうございました」
深く深く頭を下げた。
よかった…。
「なんか、やりにくいなぁ、レンが王子だなんて…」
「別に、今までどおりでいい」
「いや、ダメでしょ。じゃなくて…。ダメですよ…」
「俺がいいと言ってるんだ。お前たちとは、これからも変わらず仲間でいたいんだ」
レンはそう言って笑う。
上下関係。
そんなものなくていいのだ、と。
今まで通りの関係でいたいと、笑う。