確かに、物語ではキスで目覚めさせてくれた王子と一目見て恋に落ちて幸せになりました、なんてハッピーエンドが多いけど。
でも、これは現実なのに。

そんな私は、初めて会った人となにも知らずに結婚なんてできない。





「私は…レンの事が好きなのに!レンだって、私の事好きだって言ってくれたじゃない!」

「……」

「それなのに!レンは、私が王子様と結婚してもいいの!?」






酷いよ。
レンの気持ちなんて、その程度だったの?

もっと、強く引き止めてよ!
王子となんか結婚するなって言ってよ!




そうしたら私、…一人で城下で暮らす覚悟だってできたかもしれないのに。






「…お前が、決めることだ」

「…っ、じゃあ、私が王子と結婚してもいいのね」

「それが、お前が決めたことならな」

「……っ」






涙の溜まった瞳でレンを睨みつける。
レンのバカ!
もう知らない!

いいよ。
私が王子様と結婚して、あとから後悔したらいいんだ。





「バカっ!」