それから、レンたちも慌ただしい日々が続いた。
いろんな国へ足を運び、各国の王や騎士、そして国民に訴え続け、時には悪魔の大陸に出向き、ロイドや他の悪魔たちと対話をする。


小さなことからコツコツと。
その積み重ねが、きっとこれからの財産になる。






「姫、風邪をひかれますから、中へ」

「ありがとう…。でも、大丈夫。もう少しここにいたいの」




中庭に一人花を眺めていた私を気にかけてくれたメイドにお礼を言う。
少し肌寒くなってきたこの頃。
この世界にも寒い季節がやってくるらしい。
皆が忙しく走り回っているから、私は最近いつも置いてけぼり。
それが寂しくないと言えばうそになるけれど。
でも、皆が未来に向けて頑張っていることを知っているから。




私は、ここでみんなの帰りを待つ。






「先ほど伝書鳩が届き、明日には皆様お戻りになるようですよ」

「本当?」

「姫様、ここのところ寂しそうでしたので、少し尋ねてみたのです」

「…ありがとう!」





皆が、戻ってくる。
城に戻って、ここのメイドたちは私を相変わらずお姫様扱いしてくれる。
それが嫌なわけじゃないけれど、早く皆に「紗南!」って呼んでもらいたい。





「ねぇ、お願いがあるんだけど」

「はい、なんでしょう?」

「明日、キッチンを貸してもらえないかしら?」

「キッチンですか?」





わくわくする。
いつも一緒にいたから、少し離れるだけでこんなにも寂しくて。
帰ってくるってわかるとこんなにもうれしい。