「いったぁぁぁぁ」
落ちてきたのは冷たいコンクリートの床の上。
いたむお尻をさすりながら身体を起こす。
周りを見ればみんなも同じように落ちてきたみたい。
ロイドだけは宙に浮かび平気な顔。
…なんか、ずるい。
「ククク。よぉくきたな、人間」
肩がビクッと震える。
その声を聞いただけで、恐怖が蘇る。
覚悟してきていたはずなのに、一瞬で恐怖に支配される身体。
そんな私の肩をそっとレンが抱いてくれる。
それだけで、少し安心できる。
「貴様が、魔王か」
「そうだ。なんだ、姫を返しに来てくれたのか」
「貴様には、いろいろとお礼をしないとな」
レンは立ち上がり、魔王と向かい合う。
その姿を見なくても、威圧感で押しつぶされそう。
「おお、ロイド。悲しいよ、父に歯向かい人間と共にするとは」
「なにが父だ。息子とも思っていないくせに」
「なにを言う。手塩にかけて育て上げた我が息子よ」
「黙れ!エリサはどうした!」
ロイドの叫び声が響く。
手が、震えている。
ロイドだって、魔王には逆らえない。
そうやって育てられてきたんだ。
「…悪い子は、お仕置きだろう」
「なに?エリサになにをした!」
「暗い部屋でお仕置きを受けているさ。もう、父に刃向おうと思わないようにね」
高らかに笑う魔王。
私は拳をぎゅっと握る。


