「…憎しみの連鎖を断ち切るため、と聞いている」

「憎しみの連鎖…」

「この話を代々伝えていけば、悪魔は悪でしかなくなってしまう。その昔のように共存できる未来が来るかもしれない。その可能性がある限り、戻れる道を作っておくため、と」

「共存できる未来を…信じてるというのか…?」

「代々の王は、それを信じてきた。だが、悪魔は人を襲い、人間たちを脅かしてきては、その思いは裏切られている」




過去の話を聞かずとも、悪魔は恐ろしいものだと、人々の心に根強く植え付けられて行っていることは確かだ。




「国民たちの手前、悪魔の討伐を目的として一番隊が作られているが、裏では、悪魔の目的を調べ、どうにか和解する方法はないかと調べろとの王からの命もある」

「え…!?そうなの…?」

「ああ…。秘密裏の使命だから、紗南にも黙っていた」






悪魔との共存する未来を夢見て。




「和解する…だと?そんなこと、無理に決まっている」

「そうかもしれないな」

「…魔王さまが、そんなことするはずがない」

「俺も、今更悪魔と人間が仲良くなど無理だと思ってる。だが、紗南は、そうは思ってないんだろ?」

「え…。私は…」




でも、私が本当は口出しするべき問題じゃないのかも。
私は、結局は別の世界の人間なのだから。
それでも……。




「私は…。こんな風に争わなくても、話あえれる未来が来ればいいって思う」

「きれいごとだ」

「うん。でも、初めから諦めてたら何も変わらない。まずは、真相を知ることから始めようよ。今でさえ人間と悪魔のきいてきた話が食い違ってる。どれが本当で、どうしたらいいのか、一緒に考えよう」





だからといってどちらが悪いとかそういう話ではなくて。
知る必要があるはずだから。