「だが、魔王さまを倒すのは容易ではないぞ」

「わかっている」

「…俺はお前らの力にはならない」

「ハナから期待していない」



レンのはっきりした物言いにロイドは「そうか」と笑う。
見てるこっちがハラハラする。



「一つ、聞かせてくれ」

「なんだ」

「なぜ、悪魔は人間を襲う」






レンの言葉でみんなの視線がロイドに注がれる。
私は、うつむきロイドの答えを待った。

私は、すでに聞かされている。
人間と悪魔の過去。
ロイドは話し始めた。
私に話してくれたのと同じ話を。

皆は黙って最後まで話を聞いている。
その心に何を思うのか…。





「俺が聞かされている話とは違うな…」

「え?レンも聞いていたの?」

「ああ…俺が聞いた話は、悪魔の方から仕掛けてきて、それに反撃する形で始まった戦いだと…」

「そんなはずは…!」



話が、食い違っている。
悪魔は人間が仕掛けた戦いだと。
人間は悪魔が仕掛けた戦いだと。
どちらが本当なのか。



「じゃあ、皆も?」




そう聞くと、皆は顔を見合わせる。






「僕たちは…初耳です」

「同じ騎士なのに知ってる人と知らない人がいるの?」

「この話は機密事項になっている。一部の人間しか知らない」

「へぇ…。そっか、レンは隊長だもんね」






でもどうして…。





「でも、どうして機密事項なの?」