そうはいったものの…。
こうしてロイドとレンたちが向かい合うのを見るのは心臓に悪い。
今にも戦いが始まってしまいそうで…。
レンたちは、私のためにその思いを押しとどめてくれているだけなんだから。
ちゃんとレンたちとも話したい。




私たちは今、魔王との対峙に向け作戦を練るため集まっている。
あれから一日たち、さすがのロイドの治癒能力で、すっかり傷も消え回復したのを確認した。
だから、こうして作戦会議中なのだ。





「…お前たちの目的が人間の全滅ならば、俺たちは魔王を討伐しなければならない」




レンが意を決したように言い放つ。
それを言うことで、ロイドと一戦交えることになるかもしれない、そんな覚悟のもとでだ。
でも、ロイドは静かにそれを聞いていた。





「わかってる。…俺は、それでいい。エリサが無事救えるなら、俺は構わない」

「…ふふ」

「なにがおかしい?」




思わず笑ってしまった私を怪訝そうに見つめるロイド。





「ううん…。だってね、エリサちゃんと同じこと言ってるから」

「は?」

「エリサちゃんも、ロイドを救えるならどうなってもいいって言ってた」

「…そうか」

「素敵な兄妹ね」






兄弟愛、それが悪魔の中にあるのも、なんだか微笑ましく思えた。
ロイドは少し照れくさいのか「バカか」と呟くと目をそらした。





「…魔王の子に生まれた、同じ運命を生きてきた同志…だからな」

「同志…」

「魔王さまには、多くを求められ、同じ悪魔には羨みの目で見られ…。板挟みのような…」

「ロイド…」

「現実は、魔王さまの子だからといって扱いが違うわけでもないのにな。…聞いていただろう。あいつが俺たちの事を僕だと言っていたのを」





私はそれに、苛立ちさえ覚えた。
悪魔のそう言ったことはわからない。
それでも、同じ種族のそのうえ血のつながった息子を僕だと言い放つ魔王の神経を疑った。