「あたしは、兄ちゃんがいたらいい。兄ちゃんをいじめる魔王さまになんて…
嫌いだ」





心の中の葛藤が見える。
悪魔の親子の概念がどうなのかわからない。
それでも、やはり親は特別なんじゃないだろうか。
だからこそ、エリサちゃんはこんなにも苦しそうで。



「兄ちゃんはいつも1人だったあたしに優しくしてくれた。外の話をいろいろしてくれた」

「うん…」

「父はそんなこと、なにもしてくれなかった。私のことなんかどうだってよかったんだ」




そんなことないよ、今はその言葉が無責任に思える。
魔王を目の当たりにした私だからこそ。




「エリサちゃん、ロイド助けようね」




エリサちゃんからロイドを奪っちゃいけない。
奪わせたりしない。





「ならさっさと行くぞ」

「うん!」




レンが剣に手を伸ばす。
しっかりと手に握り抜き去ろうとした。

しかし……




「っ!」



ビリビリ!
なんと、レンのことも拒んだのだ。




「どうして…?」



レンにも抜けないなんで、どうしたらいいの?
悪魔の城が人間を寄せ付けないように、この剣は悪魔を寄せ付けないのかと思っていた。
それはきっと、悪魔であるエリサちゃんもだろう。