投げ出されるように下ろされた場所。
そこは、とても暗く不気味な雰囲気が漂う場所。
部屋の様子的にはルネス王国で王様と対面したような広間。
運ばれてくる途中に見たのは、黒い雲たちこむ荒れ地にたたずむ大きな不気味な城だった。
その様子から、悪魔の根城なのだと推測した。
ということは、ここに現れるのは、魔王さまと呼ばれる人だろう。
「…っ」
縛られているせいで手も出せずうち付けた頬が痛い。
同じように投げ出されたロイドも顔をしかめながら身体を起こそうとする。
どうしてロイドまでそんな扱いを受けるのか。
「がっかりだ、ロイド」
低音の声が響き、ズシンズシンと重い地響きがする。
姿を目に移していないのに、その威圧感がのしかかる。
本能が、危険だと、逃げろと訴えてくる。
冷や汗が流れる。
「魔王…さま…」
ロイドが絶望感のこもった声で呟く。
案の定その声の、その威圧感の主は魔王だった。
恐る恐る顔を上げ目で確認する。
人の数十倍もありそうな大柄な体に、頭には角のついた兜をかぶり、背中には漆黒の羽。
これが、魔王……。
所謂、ラスボスという奴だ。
「お前には、もう少し期待しておったのに、残念だよ」
「……っ」
ロイドは、何も言い返さずうつむく。
あんな威圧的だったロイドが、魔王の前ではあんなに怯えたように小さくなってしまう。
それ程、悪魔の中で魔王の存在は絶対なんだろう。